WAICにおける、WCAG 2.0関連文書の訳出ガイドライン(案)
一般に、文書の表記は統一されていることが好ましいことは、言うまでもないでしょう。
WAICにあるWCAG 2.0については、W3CのWCAG 2.0を訳出した文書であると同時に、JIS X 8341-3:2016の元となった文書であり、やや特殊な出自を持ちます。つまり、最初からある程度JISになることを意識して訳出されており、JISの様々な表記ルール(JIS Z 8301:2011)にある程度準じて記述されています。
WCAG 2.0の関連文書、例えば解説書や達成方法集のみならず、WCAG 2.0関連文書について各WGでこれから翻訳してWAICで公開する予定もあります。
そのようなWCAG 2.0関連文書を作成・改訂する際に、WAIC内外の指針となるような訳出ガイドラインを設けることで、品質の担保を試みるものです。また、JIS X 8341-3の将来の改訂版になる可能性のある、WCAG 2.1の訳語の検討材料になることも狙っています。
- このガイドライン(案)は、JIS Z 8301:2011『規格票の様式及び作成方法』(JISCサイトのJIS検索より閲覧可能)を参考にしつつ、アレンジされています。
- 隅付き括弧(【】)は、JIS Z 8301:2011の節番号に対応します(アルファベットの番号は附属書を意味します)。なお、このガイドライン(案)自体は、読みやすさのためにガイドラインに沿って書かれていません。
- あくまでも、案です。抜けや漏れ、誤りがあり得ます。不足等ありましたら、issueでお尋ねください。
文章は漢字かなまじりの文とし、口語体とします。 原文であるW3C文書に忠実な翻訳を心掛けます。ただし、日本語としての読みにくさがある場合は、原文のニュアンスを損なわない範囲で、読みやすい表現に変更することも可能です。
- 仮名遣いは、現代仮名遣いを使用します。
- 送り仮名は、送り仮名の付け方と法令における漢字使用等についてを目安にします。
- 漢字は、常用漢字表の「本表」と「付表」(「表の見方及び使い方」を含む。)を目安にします。常用漢字表の「本表」に従う場合に、次の事項に留意します。
例:余り 必ず 極めて 更に 少し 既に 全て 例えば 常に 特に 再び 全く 最も 専ら 僅かに
ただし、次のような副詞は原則としてかなとします。
例:かなり ふと やはり よほど
例:おって かつ したがって ただし また ゆえに もしくは
ただし、次の接続詞は、漢字とします。
例:及び 並びに 又は
(「若しくは/もしくは」の表記は、JIS Z 8301 及び常用漢字表では漢字で表記しますが、読みやすさのためWAICでは「もしくは」とひらがなで表記しています。)
例:~ない ~ようだ ~ぐらい ~だけ ~ほど
例:わかる(語の厳密な意味づけや文脈によって「分かる」「解る」「判る」...が適用され得るが、常用漢字表では、「解」「判」には「わかる」という訓は示されていない。)
- ある(その点に問題がある。)
- いる(ここに関係者がいる。)
- こと(許可しないことがある。)
- できる(だれでも利用ができる。)
- とおり(次のとおりである。)
- とき(事故のときは連絡する。)
- ところ(現在のところ差し支えない。)
- とも(説明するとともに意見を聞く。)
- ない(欠点がない。)
- なる(合計すると1万円になる。)
- ほか(そのほか~,特別の場合を除くほか~)
- もの(正しいものと認める。)
- ゆえ(一部の反対のゆえにはかどらない。)
- わけ(賛成するわけにはいかない。)
- ~かもしれない(間違いかもしれない。)
- ~てあげる(図書を貸してあげる。)
- ~ていく(負担が増えていく。)
- ~ていただく(報告していただく。)
- ~ておく(通知しておく。)
- ~てください(問題点を話してください。)
- ~てくる(寒くなってくる。)
- ~てしまう(書いてしまう。)
- ~てみる(見てみる。)
- ~てよい(連絡してよい。)
- ~にすぎない(調査だけにすぎない。)
- ~について(これについて考慮する。)
- WCAG 2.0 附録A 用語集に用語として記載のあるものは、これに従います。
- WCAG 2.0の本文に訳出のある語も、これに従うこととします。
- WG4用語集にある語は、これに従うことにします。
WCAG 2.0に出現しない用語は、カタカナ書きが受け入れられているものであれば、カタカナで表記することとします。そうでなければ、カタカナ以外の何らかの訳語を当てることとします。 カタカナ書きの表記ルールは、後述します。
例えば、"3秒以上"であれば、3秒を含みます。"3秒超"であれば、3秒を含みません。 英語との対比についての参考:英語で「以上」「以下」「超」「未満」の使い分け - teppeis blog
- 「及び」「並びに」「又は」「もしくは」の使い分けについての参考:法律用語のキソ
- JIS Z 8301では「若しくは」と漢字で表記しますが、読みやすさのためWAICでは「もしくは」とひらがなで表記しています。
- 「かつ」は英語の条件節で訳を当てることがほとんどかと思われます。
and/orが出現したときは、「及び/又は」をあてます。ちなみに、全角スラッシュです。
if節、when節の限定条件を示すときは、「場合」、「とき」のどちらかをあてます(どちらでも構いません)。 「〜する際」「もし〜ならば」といった訳語はあてません。
- 句点には「。」、読点には「、」を用います。
- JISでは、読点にカンマ「,」を用いますが、WAICでは読点「、」を使用します。
- ":"コロンが出現したとき、そのまま半角コロンを使ってもよいです。
- ";"セミコロンは、句点または読点に置き換えます。
- パーセント記号は全角を用います。 例:
例えば 400 %の場合
引用符号は、“”を用います。ただし、内容がコードの場合は""を用います。 なお、この目的でかぎ括弧「」は用いません。
- W3C文書内で出現する、文献へのリンク角括弧([])はそのまま用います。
- 丸括弧もそのまま用います。半角丸括弧を使用するものとし、全角丸括弧は使用しません。
- 括弧の外側は原則として半角スペースを入れます。ただし、記号類と隣接するときはスペースを入れません。
- 原文にない補足説明を付け加えるときは、原文対応の観点から括弧書きではなく訳註とします。
数量を表現し、数を数えられるものは算用数字を使用します。任意の数に置き換えても通用する語句がこれに該当します。序数詞(~番目など)も算用数字を使います。ただし、「ひとつ」「ふたつ」と数えるものは漢数字とします。 慣用的表現、熟語、概数、固有名詞、副詞など、漢数字を使用することが一般的な語句では漢数字を使います。
- 算用数字を使う例:1 億 2805 万人 第 3 回大会 4 か月 1 番目、2 番目 2 進法 3 次元
- 漢数字を使う例:三つのボタン 世界一 一時的 一部分 第三者 一種の 一部の 一番に 数百倍 二次関数 四捨五入 四角い 五大陸
- 一般的なルールとしては、外来語の表記によります。
- 長音符号を省く規則は【G6.2.2.b】に記されていますが、採用しません。
- とくにカタカナ語で長くなる場合に、半角スペースで語を区切ってもよいです。
- WCAG 2.0で分かち書きがされる語は、「アクセシビリティ サポーテッド」、「ユーザインタフェース コンポーネント」の2つのみです。
- 人名も半角スペースで区切ります。例: アラン チューリング
- 分かち書きの目的で、中点(・)は用いません。
- Note は「注記」とします。(「注」はfootnoteが対応するのでこれを使用しません。)
- Example は「例」とします。
RFC 2119キーワードmust、should、recommended、may、should not、must notは原則として次のように訳します。ただし、非規範部分(non-normativeやinfomativeと明示されているセクション、および注記部分)を除きます。
- must(~しなければならない)
- should(~すべきである)
- recommended(~推奨される?)
- may(~してもよい)
- should not(~すべきでない)
- must not(~してはならない)
これ以外の語に、キーワードに当たる訳出はしないように心掛けます。例えば、"have to"は学校英語では"must"に置き換えられるとされますが、規格類の訳出では置換できないものとして扱います。例えば、"have to"は「〜する必要がある」とします。 should, should notはJIS Z 8301では(〜すべきである、〜すべきでない)とは訳出しないとされていますが、現行のWCAG 2.0日本語訳がこのようになっているため、これに合わせます。
原文の単純な誤字・脱字の場合、日本語訳で断りなく修正してもよいです。【7.1】 日本語訳で補足が必要と思われる場合、「訳註」で追記することも可能です。
全角文字と半角文字の間にスペースを入れます。詳細なルールは次のとおりです。
- 原則として、半角英数字と全角文字との間は半角スペースを入れる。ただし、次のいずれかに該当する場合を除く (すなわち、半角スペースを入れない):
- 文字+半角コロンの組み合わせの場合
- 半角英数字と句読点が連続する場合
- 対になる半角記号の内側の場合
- 全角の記号の前後は半角スペースを入れない
以下に正しい半角スペースの例を示します:
1.の例:電話機の 16px 表示は
1.i.の例:例は次のようになる: この場合
1.ii.の例:ページは 2、3、又は
1.iii.の例:境界内 (ビューポート) に収まる
、例えば "このような" 表現
2.の例:オプションは「ハンバーガー」メニューボタン
原則として、106/109キーボードの刻印に従って表記します。ただし、スペースキーは無刻印なので、カナで表記します。Template:106キーボードの配列 - Wikipediaも参照。